風が頬を撫でていくほんの一瞬、束の間の心模様を切り取って紡いだエッセイ。

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「これでいい」

 

真っ逆さまに叩き落されてしまう日も。
元の形がわからぬほど鷲掴みにされる日も。
吹きすさぶ寒風に荒らされてしまう日も。

生きていれば、その程度のこといくらでもあるんだ。

そこに正誤があるのかなど知りようもなく。
自分にとっての優先順位などわからぬまま。
過去と未来のどちらに向かっているのか。

長い人生、そんな時期があっても構わないんだ。

全部まとめて閉じ込めて「これでいい」と蓋をする。
ぎゅうぎゅう詰めにして、紐をかけて、見ないふりをしておく。

失われていくものがひとつふたつ。
崩れていく様は否応なしに視界に入る。
歩き続けてきた道を悔いて座り込んでしまう。

行ったり来たり、迷いながらでも何とかなるものだ。

蓋を開けようと思う日はくるから。
手に取って眺めて笑える日はくるから。
新しいもので両腕をいっぱいにしたくなる日はくるから。

泣くな、負けるな、頑張れ、きっと大丈夫なんだ。

蓋がいらなくなったら、大きなリボンをかけよう。
「これでよかった」へと変わった頃に。

Category : essay

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