風が頬を撫でていくほんの一瞬、束の間の心模様を切り取って紡いだエッセイ。

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まだまだ先の約束をさせて

 

ふっ、と短くひといき。

その一瞬で細く弱々しかった灯火は消えて、闇と静寂に支配された。

温かくてやわらかで、いつも私を包んでいたその「あかり」はもう二度と戻ることはない。

この先一生続くであろう、後悔が生まれた日。

 

手を握り返して、背を抱いて。

ひとこと「愛している」と。

 

それは簡単なようであり。

大切であればあるほどに、とても困難で。

「喪失」への恐怖で心が早鐘を打ち、焦燥に飲まれてしまえば、もうそんなことは考えられなくなってしまう。

 

≪大好き、愛してる、ありがとう。≫

お別れを引き寄せたくはなくて。

胸の内に留めて幾度となく繰り返しては、こみ上げてくる涙もすべてそこに閉じ込めて。

小さな灯火をそっと両手で囲った。

 

瞼の裏に描く笑顔は、未だ懐かしき日々のまま。

記憶のデッサンが狂ってしまう前に、今度こそ抱き締めにいく。

Category : essay

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