風が頬を撫でていくほんの一瞬、束の間の心模様を切り取って紡いだエッセイ。

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進むためのピリオド

紡ぐ人
英 -ei-

essay

 

長い恋を終えたいと思った。

大切に大切に、心の深いところでそっと包んできた想いだった。

 

このままずっと私の内側で囲っておくことだってできる。

手放したくない、宝物だから。

 

それでも。

そこにあの人が住んでいると、私はもう一歩も前に進みたいとは思えなくなってしまう。

過去にとらわれたままでいいのだと。

 

儚い幸せを反芻しながら。

遠ざかっていく記憶を必死で手繰り寄せながら。

このまま体が朽ちていく瞬間まで温めていたら、溶けてひとつになれるのかもしれない。

 

私はそうやって生きていくのかと。

 

届かない想いをからだいっぱいに溜め込んで、自分をギュッと抱き締めながら。

心から溢れてしまわないように、1滴たりとも零さないように。

言葉にできない「会いたい」も「寂しい」もすべて抱えて生きていく。

 

そんな自分を想像したら、とても寂しくなってしまった。

 

手放したところで、あの人を忘れる日は来ない。

思い出に変わるその時まで、心に任せておくしかないのだけれど。

頑なになっている心を慰めたかった。

 

 

始まりようのない物語を、終止符のためだけに進めていく。

そして続きもないのだから、あの人に届いた時点で終わりになる。

この恋は一生叶わない。

 

涙と一緒にとめどなく溢れ続ける想いを、ひとつひとつ言葉にする。

想いを伝えると同時にピリオドを打つと知っているのに。

 

自分の欲深さには気づいている。

どんなことをしても、この恋を手放すことなんてできない。

それでも一度区切りをつけたら、見える世界は違ってくるのかもしれない。

 

あの人を想いながら。

握りしめた両手を開いて、笑って生きていける世界にいきたい。

だから受け取ってください。

 

あなたが大好きです。

Category : essay

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